シンガポールリートの中でも珍らしい、データセンターに特化した「Keppel DC Reit」に関して分析します。アフターコロナの世界でも引き続き成長が期待できるリートです。
基礎情報
Keppel DC Reitはシンガポールで最初に上場したデータセンターに特化した不動産投資信託です。現在は計18のデータセンター、約1,952,280 SQFTをアジアとヨーロッパを中心とした、11の地域と8カ国に展開しています。親会社はシンガポールでは非常に有名なコングマリット企業である、Keppel Corporationです。
データ
- 時価総額 : SGD 4.0B (約3,200 億円)
- NAV(PBR): 1.15
- FFO(PER): 32.53
- DPU(EPS): 0.08
- 配当利回り:3.08%
データセンター市場情報
データセンター市場規模と今後の予想
少しデータが古いですが、データセンター市場は2017年時点で約30億ドル(約3.3兆円)、2022年には60億ドル(6.6兆円)規模になることが予想されます。これは年の成長率でおおよそ15%にもなります。
また、この成長は2022年以降も続くと予想されており、2025年には100億ドル(約11兆円)の市場規模になる予想です。
データセンターのキープレイヤー
世界全体で見た際のデータセンターのマーケットシェアです。
データセンターリート比較
主なデータセンターリート/株を比較します。Keppel DC REIT以外はアメリカ中心ですが、いずれも株価は過去5年間で大きく伸びています。
アジアの市場とIT需要は今後も伸びることは間違いないので、「Keppel DC REIT」も今後の成長は大いに期待できると予想します。
銘柄 | 市場/シンボル | 過去5年株価成長率 | 主な展開地域 | ||
Keppel DC REIT | SGX:AJBU | 138% | シンガポール65%/ヨーロッパ25%/オーストラリア10% | ||
Equinix | NASDAQ:EQIX | 147% | アメリカ50%/ヨーロッパ30%/アジア20% | ||
Digital Realty | NYSE:DLR | 98% | アメリカ80% | ||
CyrusOne | NASDAQ:CONE | 121% | アメリカ90% | ||
CoreSite | NYSE:COR | 159% | 主にアメリカ | ||
QTS Realty | NYSE:QTS | 75% | 主にアメリカ |
Keppel DC REITのポートフォリオ
シンガポールを中心として、オーストラリアとヨーロッパに分散投資されています。
AUM(Asset Under management; 運用資産残高)でみるとシンガポールは60%程度、その他の地域で40%となっています。セクター別の収益も分散されています。
チャート
上場以来で比較すると、約3倍に値上がりしています。
また他のリートに比べて今回のコロナウイルスの影響もほとんど受けておらず安定しています。
今後の見通し
データセンター需要は伸び続ける
コロナウイルスの影響でリモートワークが当たり前になる世界において、今後今のようなオフィスはいらなくなるでしょう。また、大型商業施設の意義も問われることになると思います。そういった意味で、オフィス系や商業施設系のリートは今後の成長は期待できないのではないかと思います。
一方、データセンターへの需要はアフターコロナの世界でも変わりません。テクノロジーの発展やクラウド化に伴って、データセンターへの需要は更に高まります。これは、サーバーやストレージの容積率が劇的に少なくなるような技術革新がない限り続くものです。
クラウド化に伴い、個人や企業でデータセンターのようなインフラ設備を直接的に所持することはなくなっていきます。しかし、その代わりに利用するサービス(SaaS/PaaS)の提供者は、どこかにインフラを必要とします。仮にそれが、AmazonのAWSやMicrosoftのAzureといったクラウドサービス(IaaS)であったとしても、彼らもまたそのサービスを提供するための物理的なインフラをどこかに持つ必要があり、その行き着く先は必ずデータセンターになるのです。
データセンターへの投資はリスクが低い
また、データセンターは稼働し続けることが何よりも大事なので、非常に堅牢な作りになっています。これは一般の商業施設やオフィスを遥かにしのぐものです。そういった意味でも、地震などの自然災害に対しても非常に強い作りになっており、投資のリスクとしても低く抑えることができます。
結論
「Keppel DC Reit」は、アジアを中心としたデータセンターに分散投資できる非常に優れたリートであり、非常におすすめです。
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